自分の見る目にほっとした、銀座並木通り辺り。

手前味噌ですが、エバーの仕事に関わってくれている職人は皆が素晴らしいと思っています。それは、目に見える部分は当然として、やがて覆い隠されて見えなくなる所も妥協なくきっちりといい仕事をしているからです。機会があって他所の職人さん達の仕上りを見ることがあるのですが、そういうところが雑な職人さん達も多くいらっしゃいます。どうせ見えなくなるのだから、ということなのであり、価値観次第ですが、どうせなら抜かりない職人の魂のようなものが発動して欲しいとは思います。
思うに、来年に30周年という節目を迎えるエバーなので、類は友を呼ぶかのごとく、共通のレベルというか、プロ魂というか、を持ったスタッフや職人さん達が結局は残り続けて良い仕事をし続けているのだと思います。
きっちりとした極上の仕事にはどういうわけか、ありきたりのものとは異なる魅力が授かります。先日、用事があって銀座に出かけ、近くにあった一流店のウィンドウを見ていました。並んでいる女性物の高級バッグの中に、ひときわ惹きつけられる1点がありました。何かオーラのようなものが他の物とは違うのですが、それが何かなのかが判然としません。それだけが突出した個性のデザインというわけではないし、一目で分かる群を抜いた上質な皮や金具ということでもないように見えます。明らかに他の物とは違うのに、値段を見たら他の商品とは変わりがない。どうしてこの1点だけが惹きつけるのだろう?念のために再度値段を確認したら…それだけがゼロが一つ多い値段でした。「これだけが全然値段が違う」驚きとともに、自分の眼力に安心してほっとした気にもなりました。
良いものがわかる感性というのは人間には必要だと思っています。生きてきた年齢やそれまでの経験というものがそれを判断するのでしょう。とくに私のような生業の者はなおさらです。高い=良い、という簡単な図式でもありません。しいていうなら、その値段が「誠実」であるかどうか、です。
食事したりお酒を飲みに行ったりする好みのお店というものがあります。値段の高い安いはそれぞれあります。そして私の場合、考えてみると、好みの店が似た感覚の人とは、長くお付き合いができていると感じます。その感覚は仕事に共通するものなのかもしれません。そうやって類は友を呼んで、来年、エバーは30周年を迎えます。