きちんと考えているか

意味のないことが多すぎます。

「呼吸する壁」を売り文句に、今人気の自然素材の壁材や、手作業で仕上げる塗り壁などを用いた家が人気であるようです。あろうことか、そこにビニールのクロス材を併用しているという信じられないケースを知りました。ビニールのクロス材は空気を透過しません。誰が考えたって、それでは呼吸しない。なのに平気でそれを「呼吸する壁」としてPRしているという・・・

おそらく、つくる側は顧客を騙そうとしているのではないと思います。騙すとかごまかすとか、そういったレベルでもなく、ある意味それよりもたちの悪い、何も考えていない人々だと思います。せっかく付けた「呼吸する壁」というキャッチフレーズも台なしです。気の毒なのは、その宣伝文句に惹かれて取り入れた顧客です。

どうしてこうも意味のないことが多いのだろう、どうして何も考えていない人達が多いのだろう、同業者としては、怒り以前にひたすら唖然とします。

家づくりはクリエイティブな仕事です。工場で毎日同じ物を作る作業ではありません。そんな我々にとって最も恐ろしいことは、思考を怠けること。考える必要のない単純な流れ作業のように思ってしまうと、「呼吸する壁」の一件のような悲劇が起きます。

きちんと考えているか。

スタッフの図面や現場をチェックする上で、これほど大切なチェック項目はありません。自らの図面 に対する自問自答も、変わりありません。

きちんと考えているか、私は。

何気なく引いた一本の、おざなりな線が、決してそこにないように。