しなくてもいい、でもしたほうがいい、大切なこと。

仕事とは、気づきであると思い、そのことをエバーでは実践しています。相手を思うこと、です。相手とはお施主様のことです。その相手に、いい思いををしていただくにはどのような気づきが必要か。それは、家づくりのマニュアルのようなものには載っていません。

たとえば、今どきの梅雨は雨の日が続きます。現場の素材は少なからず湿気を帯びます。家は、基礎の上に木材で土台を組み、その木の土台に縦に何本もの柱を組みます。なので、土台にはいくつもの柱を組ませるための溝を掘ります。

溝ですから、雨が降ったらそこに水が溜まります。その後でそこに柱となる木を埋めていくのですが、たいていは、水が溜まっていても気にせずにそこに柱を埋めます(下の画像A)。水がいっぱいになった溝に柱を入れ込んだところで、そこから家が腐っていくわけではないので、おそらくそうしていくか、それが気になる現場監督であれば、そこに溜まった水を吸い取ってから柱を入れる、くらいのことはするでしょう。

しかしエバーではそれがどうも嫌なのです。なので、溝の全てに防水用のテープを貼って、柱を入れる時まで雨水が入らないようにしています(下の画像B)。それをしたからといって家の強度が増すのかというと、別にそういうわけではありません。しかし、雨水で満たされた溝にずぶずぶと柱を入れるよりも、こういう些細なひと工夫を加えた方が、つくっている家を大切にしているということだと思います。別にお施主様に見せるものではなくても、そういうことをした方がいい、と思うことを、たくさん気づくようにして、気づいたら行動に移す、それをすべきと思っています。いや、むしろお施主様には見えないところ、家ができてからでは隠れてしまう場所の知恵を、しっかりやる、ということが、最も重要なことであるとエバーでは考えています。

何かをつくるということにおいて最低限守るべきことは、正しいつくり方でつくる、ということなのは言うまでもありません。そして、気づき、行儀、作法、そういったことは、必須ではありません。しかし、そのような「必ずしもやらなくてもいいこと」の中に、大切なことや大切な気持ちがあります。