つねにお施主様ファーストでいるために。

10連休の間、電話番と何か起きた時のための待機として、経理と交代で出社していました。会社は休みであっても現場は動いています。何もアクシデントがなく、電話番も幸いなことに暇でした。元号も新たになったし、会社も25期を迎えたし、おかげで先々のことも含めていろいろと考えることができました。

以前にも書きましたが、契約はますます欧米化し、たくさんの書面が必要になってきています。オナリエバーの着工にあたっては、エレベーターの取り付け一つをとっても業者さんから膨大な書面が届けられたことを思い出し、あらためてそれを手に取ってみました。「労務報告書」というものです。立ち入る人物のリストや、その個々の資格の複写、搬入する際のトラックの位置や搬入経路、エレベーターの各部品の製品スペックなどなど、事細かな決め事が記されています。ファイルは3冊あり、どれも適度な厚みがあります。全ての工程やルールがこの「労務報告書」に乗っ取って行われます。これをつくるだけでも膨大な労力がかかるものですが、業者さんはそれをうちだけでなく全ての案件でつくっているわけです。相当な時間を消費すると思います。

エレベーター一つでこうなので、オナリエバーのレベルの商業ビルでも、さまざまな業者さんが提出する書面をまとめると膨大になります。何かあった時にトラブルの回避や責任の所在を明確にする上で役立つものですが、正直、ここまでやる必要があるか?とも思ってしまいます。しかし、こういう時代なのだからさまざまな面倒な手続きというものは、面倒であっても不可欠なのだろう、とも思います。

時代の移り変わりとともに、エバーのスタッフも時代に合わせて潮流がありました。お施主様と同じ目線に立って並走していくことが主流だった時代もありました。そのような時代では、何か書面をつくってたくさんの約束事を事前に準備するというより、日々の切磋琢磨やトライアンドエラーが最終的にお施主様のビジョンに結実していきました。しかし今はエバーのハウスビルドの哲学も異なります。お施主様ファーストであることには変わりありませんが、その望まれる在り方次第では事前のしっかりとした取り交わしや書面上の手続き(時には膨大な)が必要に迫られていきます。そのことに時間を割くことは大変なことだし、クリエイティブでありたい我々にとっては面倒くさいことであったりもします。

しかし、そこはものは考え様です。面倒くさいこととは、今までの自分たちの仕事とは畑違いであるということで、それをやることで違ったものの見方を学べるということになります。大手はそういった面倒くさいことをきちんとやります。そうすることでお施主様の信頼を得ています。ここまできっちりとしているのか、さすが大手だ、という綿密さが大手たる所以でもあります。そのことを学び、実践していけることは大きなことです。

そしてもう一つ、これからに必要なことというのは、作法の原点のようなものだと思っています。前回のコラムにも通じると思いますが、お施主様の方向を見ること、お施主様のためにできることを当たり前にできていること、それが詰まるところ大事です。あまり聞かないことのようですが、エバーでは社長である私が現場を常に巡回し、現場の不行き届きがないようチェックをしたり、不足があったなら現場スタッフにアドバイスをしています。そのことは表向きにはお施主様の目に触れないことが多いと思います。しかしそれは間違いなく結果としての「家」に表わされてきます。私がつねに行っているお施主様ファーストの行いの一つです。