エバーが新たに取り組む「APS工法」について

従来、日本古来の木造家屋の軸組工法、繋ぎ目を掘り込んでカマやホゾを設けて噛み合わせるやり方は、優れた耐久性を生み出し素晴らしい日本の建築文化です。それは同時に、優秀な日本の大工による堅牢な美学でもあります。
しかしながら、現在はどうしても家を建てることにおいてコストが重要視されます。軸組の削り合わせからくる木材の欠損率が高く、現在では施工コストの2割前後を上乗せせざるを得ない従来工法は、その代替策としてコストを抑えた金型工法が数多く取り入れられています。金型工法とは文字通り、繋ぎ目に金属のプレートやユニットを用いた工法です。木材の欠損率が少なく、比較的低コストで家が建てられ、仕上がりも頑丈な金型工法です。
しかしながら、従来の伝統工法に劣る重大なデメリットというものも存在します。

皆さんは火が消えた後の家屋の火災現場というものをご覧になったことがあると思います。
ある家は柱も含めて家屋ごとが倒壊します。またある家は焼け焦げて家の跡かたはなくなっても、柱はきちんと生き残って家としての輪郭が残っているような焼け跡もあります。金属は火に強く、木は火に弱い、と我々は想像します。しかし、正確には金属は火で溶けてただれ、木は火で炭化し炭となるのです。全ての家がそうであるとは言い切りませんが、柱も含めて家屋全体が倒壊する可能性が高い家というのは、繋ぎ目の金型部分が溶けて関節が外れ、家全体が崩れ落ちたことが倒壊の原因になります。火災で死亡に至る主たる原因というのは、有毒ガスによる窒息と倒壊による下敷きです。メリットが多くトータルバランスに優れた金型工法ですが、それは同時に、火災による家の倒壊率が高い、という弱点をも合せ持っているわけです。

そんなことから、エバーではその両方のメリットを合せ持った、在来工法の進化型といわれる「APS工法」について、その意義をあらためて検証し、必要に応じて活用していく方針をとろうと考えています。
APS工法では金型工法とは異なり、金属ではなく対火性の強い高強度・高耐熱の鋳鉄を用います。鋳鉄は木材のつなぎ目に覆い隠れるような状態で埋め込まれるので、それ自体が単体で溶けにくい性質をもっています。

安全性・耐久性・経済性、ありとあらゆる条件を満たす、これ以上のものはない、というものは、どんなジャンルの何をとっても、そんなものは有り得ないのではないかと思います。万物に「完全」がないのと一緒なのかもしれません。その時々で、何が最善であるかを選択する必要があります。

旧来日本の家の建て方というのは、世界的に絶賛され模倣される素晴らしいものです。しかしそれだけを頑なに守るだけでは現実の需要からは遠ざかる一方です。良いものを見極めることと、シンク&トライを重ねて良いものは取り入れ、ダメなものは捨て去ること、それが大切なのではないかと考えています。