デザインの問題なのか?それとも私の問題なのか?

最近のトレンドがよくわからないでいます。以前にもこのコラムで書きましたが、頓挫した新国立競技場のデザイン、あれ、いいんでしょうか?自転車のヘルメットみたいな、あのデザインです。しかも、それを作るのに莫大なお金がかかるところでした。あれ、みんながみんな、いいね!、かっこいいね!、と思っていたんでしょうか?いや、これは私のデザイン感覚を誇示しているわけでは決してありません。むしろ逆で、それを理解できない自分はやはり古いのかな、と、自分自身を疑っていたりしています。

それと同じく、最近のクルマのデザインが、私にはわかりません。ある国内メーカーのクルマは、どれもみんな最初からエアロパーツをくっつけたような、何だかふざけたデザインに思えてしまいます。フロントグリルがやけにアニメっぽくて、走っていたらマジンガーZやガンダムに変身するのではないかと思えてしまうような顔付きをしています。我が家にはトヨタのLLクラスのミニバンがあります(LLクラスのミニバン、変な言い方です笑)。必要に迫られて使っていますが、やはり顔はひしゃげたガンダムのようです。中は高級感があるしサイズや機能は申し分ないのですが、どうもあの顔は好きになれないでいます。

あ、そもそもなぜデザインの話をしているかというと、あの五輪エンブレムの問題があったからでした。知人のグラフィックデザイン事務所の人間はこう言っていました。「当初の五輪エンブレムの時点では擁護していた。しかしその後に掘り起こされた類似デザインの数々を見て、あ、もうこれはダメだ、と思い彼を擁護できなくなった」まあ、それはともかくとして、あの五輪エンブレムについても、私は、競技場やクルマと同じく、同じくガンダム的な潮流を感じた次第です。角が「ガシッ!」線が「シュパッ!」丸が「ギュンッ!」みたいな、あーまたガンダムか…などと感じていました。

好きではないものを突っぱねているだけでは、進歩はしません。なので、好きでなくても「好まれる理由」というものを常に知ろうとしています。そしてその一方で「自分の感性はもう古いのかもしれない」と考えるようになっています。建築の本業においても、感性の衰えた人間の指図は迷惑だと思うので、なるべくスタッフの感性を尊重しようと思っています。

トレンドというのは、日に日に速さを増しているようです。3年前のデザインがもう古い、と感じるこの頃です。

しかし、私がまだ若かった頃は、新しいことを重要と思うのと同じく、美しいことを重要とも思う世代でした。その頃、街中を「ピアッツァ」というクルマが颯爽と走っていました。「117クーペ」というクルマが走っていました。それらはいすゞが工業デザインの巨匠ジウジアーロに依頼してつくった、美しい大衆車です。ご存知のないお若い方々はぜひ画像検索なさってご覧になってください。魅力的なデザインというのは、何十年経っても美しいものなのです。

人間工学だとか空気力学だとか構造フォルムだとか、そういう最新の機能性から、どんどんいろいろなものが自転車のヘルメットみたいになっていきます。あるいはロボットのようにメカニカルになっていきます。しかし、我が家のLLミニバンはふだん一般道を走るので、最新の空気力学を計算したあのガンダム顔など、F1じゃあるまいし実際にはいらないはずです。だったら、いろいろなものは、もっとシンプルだったり、優しかったり、スマートな方がいいのではないか?と思います。何でもかんでも自転車のヘルメットみたいになり、そして、あげくの果ては家までも?…う〜ん、それはきついと思います。

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