マニュアルよりはるかに大事なこと。

常識では考えられないことがあります。UFOとかオバケのような超常現象ではありません。ごく日常にありました。「信じられない」と口に出てしまいます。

カフェレストランでのことです。そのカフェレストランはチェーン店で、以前に行ったことがありました。店内は落ち着いていて、その時は接客もそつがなく、よかったと記憶しています。

先日、私が以前に行ったそのカフェレストランチェーンの別のところにある店に、子供を連れて入りました。以前に入った店は繁盛していたのですが、どういうわけか今回入った店はとても空いていて、待つこともなくすっと入ることができました。男性のスタッフ(あとでわかったのですが店長)が、「あ、どうぞお好きな席に…」と言いました。私は、どうもその時の素っ気ない対応ぶりから引っかかりがありました。そして食べ物や飲み物が出てきて、時間が経ち、子供の水がなくなりました。子供のために水をもらいたかったのですが、時間が経っても水を入れに来てくれることがなく、当のスタッフは何をしていたかというと、ずっと店の奥で別のスタッフとおしゃべりをしているのが聞こえていました。客のいない暇な店内で、私たちの席の水がなくなったことくらいすぐにわかる状況で、店内を巡回して水がなくなった子供のコップに気をつかうこともせず、客に聞こえるような音量で無神経におしゃべりをしたり笑い声を出していました。

帰ろうと思い、レジに行きました。レジはまたしても同じ男(店長)です。「3,850円です」と言われ、料金を出すまでの間、彼は透明なビニール袋にお菓子らしきものを詰めていました。手を休める気配がないので、「ああ、これは子供連れの来店客に対してのプレゼントなのだろう」と思いました。だって会計をしている客の前でその手を休めないからです。「はい」と私が料金を出すと、「あ、はい…」とようやくその手を止め、そのお菓子の袋をかたわらに置きました。そのお菓子は、子供連れの来店客へのプレゼントではなく、ただの販売用のお菓子でした。私が料金を払うまでにその男がしていたことは、販売用のお菓子詰めだったのです。私はあっけに取られました。

申し上げたように、そのカフェレストランチェーンはふつうに人気がある店です。なのに、今回行ったその店は客が居ついていませんでした。来店してその理由がはっきりわかりました。万事が万事こんな態度では、誰もリピートなんてしないでしょう。カフェレストランチェーンだから客対応のベーシックなマニュアルは必ずあるのだと思います。それなのにこのような差ができてしまうのは、そこを運営する店長の人間力の低さです。

別のある居酒屋では、注文を取っている時に女性店員が私たちの目の前でスマホをいじり出しました。私たちは「ああ、この店ではスマホみたいな端末で客のオーダーを入れているんだな」とその時に思いました。しかしそれは間違いでした。その店員はただスマホで友人にメールか何かをしていただけでした。オーダーをしようとしている私たちの目の前で、です。その後で再びその店員を見たら、やっぱり店の一角でスマホをいじっていました。あきれるばかりです。

どちらの店でも、スタッフへの教育というものはあるはずです。彼らは、それは守っているのかもしれません。しかし、マニュアルに書かれていない、人としてやってはいけないことというのを知らないのですね。マニュアル以前の問題です。

マニュアルを覚えるよりも、人としてやってはいけないことを知り、それを絶対にしないことの方が、はるかに重要なことです。社会の一員として持っていなければならない作法、その最たるものは「お行儀」のようなものです。