どんな仕事でも付いてまわることだと思いますが、私たちにも、仕事の本旨である家づくりとは別に、事務手続きというものがあります。見積作成や書類申請等も家づくりの一環ではないか、と言われれば、それはそうです。とくにお客様への連絡や通知というものは綿密にやっていかないといけません。なのでここで言う「事務手続き」というのは、お施主様ではなく、建築関連業者への事務手続きであるとお考えください。そうしたものは、いかにして合理的に、スピーディーに済ませていくか、あるいは省いていくか、ということを考えていかないとなりません。なぜなら、私たちは、そこに時間を浪費せず、お施主様の要望に沿った家づくりをすることに、より多くの時間を割き、没頭しなければならないからです。
たとえば、お施主様の予算に合った見積金額でタイル施工業者に合意をしてもらう必要があります。仮に「予算は○万円だが、この仕様で御社ではいくらでできますか?」と聞いたとします。タイル施工業者は「この予算ではちょっと厳しいですね」という答えが帰ってきました。それをお施主様にフィードバックします。お施主様は「そこを何とかなならないものでしょうか?」と、やはり夢はそう簡単に捨てきれないものです。そこで設計が代替策を考え、それを持ってタイル施工業者に再び打診してみます。「これなら何とかいけるでしょう」という答えを聞き、そして再びお施主様に打診します。「うーん、いいと思うんですけど…」と、やはり納得のいかない様子…そんな風にして時間は刻々と浪費されます。
こういう場合なら、タイル施工業者との間に、いかに人間関係が構築できているか、がものを言うと思うのです。
たとえば「予算は○万円だが、この仕様で御社ではいくらでできますか?」「この予算ではちょっと厳しいですね」というやりとりになったとします。そこで、「だとしたら、お施主様の希望に沿ったかたちで、かつ予算内でおさまるように、ちょっと知恵を絞ってもらうことができますか?」なんていうコミュニケーションが取れたら、互いの事務手続きの省力化になると思うのです。少なくとも、見積書を何度となく交わすような、あの忌まわしい時間と手間を、省くことができます。図面を作成する時間や手間も減るでしょう。
営業職の方なら、いつ終結を迎えるのかわからないような「見積書地獄」のようなパターンがあります。あと何回出せば終わるのだろう…ああ、昼間こんなに現場で働いているのに、帰ってまたあの見積の変更に対応しなければならない…うまく頭を働かせて、こういう事務手続きの輪廻をいかに断ち切っていけるか。それが、お施主様の目には見えないところでの、私たちの家づくりの努力でもあります。
「ほう・れん・そう」を徹底し、企業運営の合理化・透明化に務め、会社がISOの基準を満たしているとします。しかし、それを活かすのも殺すのも結局は人なわけで、マニュアル一辺倒の「ほう・れん・そう」だけ義務付けたって、じゃあ本当に合理化・透明化されたのか?というと、決してそうではありません。 義務付けられたものに、ケースバイケースの対応は含まれていません。そう考えると、エバーの仕事は、決まったノウハウだけ駆使しても何の役にも立ちません。だって、お施主様の自由な家づくりをポリシーとしているのです。もう、全てのことがケースバイケース、なんですから。
大事なのは、その時ごとに、何を思い、どう機転を働かせられるか、です。全てはお施主様のために。