出かけよう。言葉を聞こう。

偉人の名言というのがあります。
ロックフェラー曰く「私は災難が起こるたびに、これを良いチャンスに変えようと努力し続けてきた。」
坂本龍馬曰く「世の人は我を何とも言わば言え。我が成す事は我のみぞ知る。」
へミングウエイ曰く「今はないものについて考えるときではない。今あるもので、何ができるかを考えるときである。」
松下幸之助曰く「石の上にも三年という。しかし、三年を一年で習得する努力を怠ってはならない。」
マリリン・モンロー曰く「私は見られていないときは死んでいる。」

素晴らしい言葉ばかりですね。我々に強い何かを知らしめてくれるようです。

ただ、こういう言葉を、単に字づらだけ覚えて心の糧にしても、何の意味もない。

大切なことは、その言葉の背景にあるものを知ることです。「松下幸之助はなぜそのような境地まで辿り着いたのか?」それを自分にたとえて応用しようとする心構えをもつことが大切です。偉人の名言を自分のものにする、とは、自分の立場に置き換えて自分なりの行動を起こすことではないでしょうか。いい言葉だから覚えました、というだけでは何も変わりません。空手の本を読んで強くなったと思い込む人がいます。ビジネスの啓蒙書を読んで金儲けがわかったような気になる人がいます。それと一緒のレベルになるのは、恥ずかしいから止めましょう。偉人の境地をそんなに安っぽくとらえてはバチがあたります。

さまざまな人の言葉を知る、直に聞く、聞きに行く、というのは、とても大切な行いであると最近感じています。日々の仕事に追われていると、どうしても価値観が凝り固まってしまいます。できるだけ機会をみつけて、出かけていこう、そして人の話に耳を傾けよう、と思っています。経営者どうしの横長の集いのようなものは相変わらず苦手なのですが、自分自身やスタッフ達の成長になるような勉強会やコンベンションには、つい敬遠しがちだった自分を改善しようと思っています。

その一つのきっかけになったのは、以前にスタッフと出かけた安藤忠雄さんのコンベンションです。そこでは安藤さんご自身がお話をされたのですが、さすがだなと思わされる反面、日々思うことの根本的な部分というのが、とても自分と近しいことを発見できました。それは特別に個性的な考えではありません。むしろ、現代人としてベーシックに持つべき心の強さのようなものです。
安藤さんは「綺麗事ではいい仕事はできない。」と言います。それは、あくどいことをしろ、という意味ではありません。むしろその逆で「汗臭い努力や、人が好まない交渉事をきちんとやれる人が、いい仕事をする資格がある。」と言っているようなものです。
安藤さんのような優れた人が、きちんとそういうことを正直に伝えてくれることは、私にとっては勇気であるし、スタッフ達にも大きな刺激になったようです。その後すぐに仕事の内容に表わされるほどの、そんな内面の変化があったようです。

とかく私たちは日々の仕事に追われてしまい、自分を高めることを二の次にしてしまいがちです。時には現場を離れて、本を読むことも大事です。芸術に触れることも大事です。そして、それと同じく、多くの人に会い、その人々が発する言葉に耳を傾けることも大事なのですね。

安藤さんの言葉にこのような名言があります。「お金は栄養にならんと、よう分かったんで。」さすが、安藤忠雄さん。同感です。私も、もっと違う栄養が欲しい。

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