お客様に対して、決してやってはいけないことがあります。
それは、「差別をしないこと」です。注文が同じであるなら、客に対して仕事の内容やサービスに差異があってはいけません。飲食店であれば、同じオーダーなのに、相手によって値段や量が違っていては、その店は信用を失くします。初めて来た客でも、気に入らない客でも、親しい馴染みの常連と供されるものは全く一緒でなければならないということです。
エバーという会社が、もしも茅ケ崎のお客さんだけをえこひいきにして過剰なサービスを行っていったとしたら、エバーという会社はまたたく間に信用を失うでしょう。どんな商いであっても、誰か特別な人だけに利益を多く与えたり、気に入らない人に利益を少なくしたりしてはいけません。
しかし、それは世間に往々にしてありがちなことです。たとえばひいきの客には少し多めにサービスしてしまいたいと思う気持ち、自然に働きます。しかし、それは前時代的な商売です。常連さんには手厚く、とか、良い客だからつい多めに、という心理はかつて当たり前にあったのだと思います。ところがそういう時代は終わりました。今やそれは「差別」だからです。誰かを特別扱いするということは、他の誰かをマイナス方向に特別扱いする、ということと等しくなる、それが今の解釈です。
お客様に対してしてはいけないこと、それは「差別」です。では反対に、お客様にすべきこととは…。
それは、「分別をすること」です。お客様ひとりひとりを理解して、そのお客様に合わせた自分なりのわきまえ方を作ることです。お客様は千差万別ですから、仕事の内容やサービスに差異を生じさせぬ範囲で、つまり差別のない範囲で、応用をきかすということです。飲食店であれば、嫌いなものを聞いておいて損得ないように中身をさしかえてあげるなんていうこともあるでしょう。体調を察して少なめの品をすすめるなんていうのもありがたいことです。そのような行いは限られた人に行うものではなく、全ての客に等しく行われるもので、えこひいきではありません。エバーでもそのようなことは日常的に行われます。必要のない設備は省いて、その分を別の欲されている設備作りにまわしてご提案する、そういうことはあえて言われなくても自然的にしてさしあげるべきことです。全てのお客様のライフスタイルを勘案して調整していることなので、差別ではなく、分別なのです。
差別はすべきではない。分別はすべきことである。これが今の商いのスタイルです。そこには、明確なルールが必要であるとともに、心を駆使した柔軟な配慮も同時に必要になってきます。つまり、厳格でかつ応用がきいていること。人としての高みが要求されています。