平成18年、年頭にあたって

正月に美術書をめくっていて、ふと手が止まりました。

「黒織部沓形茶碗 銘 わらや」織部焼の祖である古田織部の作品。

どっしりとした重厚な素材、飾り気のない造形の中に、

無邪気なくらいに単純で、なぜか心踊らされる図形の楽しさ。

あたかも正反対に感じられる要素が一体となって

他の器にはない独自の一体感を感じさせる逸品。

見た覚えのある器なのに、

その日は何故かとくに見入られたのを覚えています。

とても大きなヒントが隠されているように思えたのです。

 

和。

それは、他者を愛し、自分を愛する、心の様。

日本人のルーツであり、今こそ必要なものではないかと思うのです。

洋のライフスタイルと和の感性が交差する

私たちの日常。

便利な中に埋もれてしまっている和の精神性は、

本当は日本人が等しくDNAとして持ち続けている命そのもの。

それなしでは自らを証明することすらできません。

そして、家はいわば人の器。人を包んで和を為すものでありたい。

家族ひとりひとりの思いも個性も、和風も洋風も包んで、

新鮮だけれども心やすらぐ、モダンだけれど温もりのある、

長所と長所が融和する家。

和のある家。

 

古田織部の茶碗は、圧倒的な美を感じる一方で、

まるではしゃぐ子供を眺めているようなほのぼのとした幸福を覚えました。

「この器のような家がつくりたい」そんなことを心から思いました。

EverGreenHomeがつくり出した家から、たくさんの和が育まれるように。

心を引き締めて、今年もがんばる所存です。

 

平成18年 正月 
エバーグリーンホーム代表取締役 猪狩裕一