梅雨がこんなにこわい季節になるなんて

このコラムを書いている時点で、九州熊本を筆頭とした豪雨が続いています。災害に遭われた皆様にはこの場を借りて心からお見舞い申し上げます。考えると時期あるごとにこうした自然災害をテーマとした内容をしたためていることに気づきます。
かつては梅雨の時期にこうした集中的で持続した大雨が降ることはなかったように思います。梅雨といえばシトシトと弱い雨がだらしなく続いているイメージで、豪雨で河川が氾濫するような出来事はあまり記憶にありません。梅雨の後の台風の通過時期のような激しい雨が、最近は梅雨の時期でも顕著になってきました。「川のそばは危ない」そんな印象が年を追うごとに増していくような気がします。
土地を選び家を建てる時、その印象が誰しも脳裏に浮かぶのでしょう。川のそばが危ない。山が近いと土砂災害の危険がある。海沿いは津波や高波が怖い。…もっともですが、じゃあどこに住めばいいんだよ!となってしまいます。この狭い島国の中で、まったく安全なところなんてあるのだろうか、と思ってしまいます。家を建てる側としてできることといえば、その土地の性格を知って、その土地にあるリスクを回避できるよう対策を施すことです。土地が低い場所であれば土壌を高くしたり、床上の高さを設けたり、などです。
かつて茅ケ崎はよく床下浸水がありました。長雨はさぞや心配だったでしょう。そのたびに海抜の低い場所の住人は水をかき出し、泥をかたずける、そんな光景がありました。家は床上への浸水は致命的ですが、床下までであれば持ちこたえることができます。そんな苦悩が柳島のポンプ場ができたことで解消されました。それまでは大変であったと思いますが、最近の豪雨での被害に比べるとまだましであったのでは、と思います。なんせ今回の熊本では水かさが優に大人の背丈をこえて、2階の床あたりまで水が届いているのですから。
今回の件で、私はあらためて近隣のハザードマップを確認しました。以前も思ったことですが、このハザードマップ、私は非常に大雑把であると感じています。茅ケ崎の海沿いのエリアがほぼ全て、救助が難しいエリアだと指定されているのです。その理由は情報通の人曰く「消防車が入れるかどうか」の目安だといいます。ええっ?と思います。どこもかしこも消防車が入れないことになってるのか?おかしいじゃないか?と。さらに情報通の人は補足します。「ほら、ここは安全だけど、その隣のこっちなら低リスク、なんてことを事細かにやっていると、いろいろ言ってくる人が出てくるんですよ。苦笑」と。そういうものなんですかね。命を守るための道しるべがそんなことでいいのか、と思います。
今後も猛威をふるうであろう自然災害に対抗するために、私たちの業界が学ばなければならないことはたくさんあります。私もそういうセミナーや講習会を見つけたら足繁く通って耳を傾けるようにしています。しかし、どうもそういう場での話というのは、学びが薄いというか…。「んー、そういうことは知ってるよ…」という、割と当たり前の話の場合が多いです。もっと踏み込んだ具体的な内容であってくれたらいいのに、と思います。世界の抜きん出た防災技術のノウハウとか、災害から免れた稀有な住宅はこんな対策をしていた、日本家屋の伝統からひも解く知恵、とか、そういうこれからの家づくりに反映できる話が聞きたいんだけど、などと思ってしまいます。