長野県は先日の大雨で大変な被害を受けました。私の場合、身内が暮らしていたり、ル・ニコ・ア・オーミナミに無農薬の野菜を届けてくださっている竹花農園さんに常日頃からお世話になっていたりと、長野は何かとゆかりのある土地です。何か手助けができないかと考えました。とはいえ広範囲に何かができるわけではありません。そこで、松代にいる竹花さんとその近隣の皆様が少しでも苦痛から解放されればと思い、また現場ではボランティアの皆さんが奮闘しているもののいかんせん専門職の方々が不足している状況から、大工を一週間ほど自費で派遣しました。
大工衆とともに町を見回すと、テレビや報道では映らないところで悲惨な状態が多々あり、それらを目の当たりにして自然災害への人間の無力さというものを痛感しました。それでも何とかしたいと思い、限られた時間でできることを考え、まず当面を乗り切るという観点でお手伝いをさせていただきました。大幅な改善は後から然るべき誰かがするとして、とにかく今、困っている方々の荷を少しでも下してあげたい、という思いです。
床下または床上を泥水で侵されてしまった現状では、まず行わなければならなかったのが衛生対策です。各戸を巡回し、カビの繁殖を防ぐために、床を剥がしたり、壁に穴をあけて家の随所に風を通す措置を取りました。そしてできる限り窓を開けること、台所や風呂場の換気扇は一日中でもいいからつけておくことなど助言させていただきました。地面から離した高さに荷物置き場を設けて、少しでも家財が泥やカビから守れるようにと配慮を行ったりもしました。
長野での時間で感じたことは、人々の助け合いの心です。竹花さんのご近所には老夫婦が住まわれていたのですが、奥様は入院中で、足のよくないご主人がお独りで暮らされていました。竹花さんはそのご主人の危険を察して、床上浸水が始まる前に助けに行かれました。おかげで一命を取り留めたのですが、竹花さんがそういった近隣の事情を把握していなければ、そのご主人は間違いなく亡くなられていました。こうした中、大切なのは近隣どうしの関係の深さだと切に感じます。
以前にも触れましたが、私たちの仕事はもはや、地震や津波といったことだけでなく、環境の変化を的確にとらえて大雨や台風といった事象にも対策を講じる必要があるのだと痛感しています。長野では免震住宅の基礎が、その構造があだになって大雨で浮いてしまい、家全体が横滑りするという現象が起きています。構造に悪意があるわけではないのですが、もう一歩踏み込んで考えることが必要になってしまったようです。自然災害についてもっと広範囲にものを考えて家づくりをする時代になっています。