緻密な空気 ~メゾン・エルメスの光

銀座まで出向いた。場所はメゾン・エルメス。

偉大な建築家レンゾピアノの作品は、ガラスブロックに囲まれた巨大な建造物である。御縁があり向かったのだが、あらためて見ると参考になる部分が本当に多い。 ピアノは、流行の先端をゆく銀座にはガラスがふさわしいと考えた。日本の都市はいつも動いていて、昼と夜で表情を変える。ガラスも絶えず変化し、透明でありながら、不透明になり、色と時代の気分で変わる。そこでピアノはエルメスを光と戯れるランタンにしたかったのだ。

溶けたガラスの滴が型に流しこまれたブロックは、ひとつひとつが微妙に表情が異なる。45センチ角のガラスブロック13,000個はほとんどジョイントされることなく屋上から吊されていた。その技術は、建物全体が微かに揺れるような不思議な錯角をおぼえるのである。地震の国ならではの優れた発想と、作家のロマンチシズムの融合である。水面 が直立したようなガラス壁は、昼は外部からの光を受けて輝き、夜は内部の照明や外のネオンサイン、ノイズのようなヘッドライトの明りを受けてさまざまな表情を見せる。まさに巨大なランタンである。ぜひ日が落ちてからの内部の美しさも見に行かれてほしいと思う。
ピアノもさることながら、個人的にエルメスというブランドのもつ考え方が好きで、見るものだけではなくその空間に漂う空気の緻密さを大切に持ち帰ってきた。

東京のもつクリエイティブパワーは素晴らしい。
ピアノが創ったメゾン・エルメスがいつもの景色として存在していることは素晴らしいと思う。
さまざまなものに資本が投下され、活性されてゆく。街が輝いて、街が人を輝かせている。
とりとめのないことを考えながら茅ヶ崎へと帰る。

ずっと変わらないことが良いことだとばかり信じていると、いつか取り残されてしまうと思う。茅ヶ崎や湘南というライフブランドは、歴史があるだけに、いつかしっぺ返しを食らうような気がする。1時間で行ける東京がまるで違うスピードで進んでいるのだから、日々差異は広がっていくのが現実である。

エルメス オフィシャルウエブサイト http://www.hermes.com