本物は実に良い。そう実感しました。
来月のHPで新規に紹介されることと思いますが、横須賀市のO様邸がもうすぐ完成します。そこの床を本物のヘリンボーンのフローリングにしました。木材の小片を木目を交差させながら規則正しく張り上げていく寄木張りです。ヘリンボーンは元々はツイードのコートやジャケットによく使われている山と谷の連続する美しい柄のことを指しますが、フローリングでも同様のクラシカルな雰囲気を醸し出します。かつては豪邸と呼ばれる家で見かけたものです。
しかし、いつしかコスト重視で量産型のユニット式のものが多く出回り、それがいかにも安っぽく感じられることから、廃れていってしまいました。
ですから当然、手間がかかります。コストもかかります。しかし、美しさといったら実に素晴らしいものです。職人がひとつひとつ苦労して張り上げていったその出来栄えは、我々もお施主様も等しく感無量に違いありません。
床に贅を尽くすというのはとても有意義なことであると思います。床は、そこに住む以上、切っても切れない関係になるのですから。日々、その美しさに感嘆し、日々、足元にひしひしと贅を感じることができます。
私たちは、全ての欲望において無尽蔵に贅を尽くすことはできません。その人なりに限界というものがあります。
そして、どこにお金を使い、どのようにして贅を尽くすかという点で、その人の価値のようなものが決まってくるのだと思うのです。
そして、贅を尽くすことは、他人に向けた行いではありません。他人に自慢するために贅を尽くす人は、アラブの大富豪なら別として、その程度の価値の人かもしれないな、なんて思ったりします。私が思うに、一流ブランド品の存在意味というのも、「新品を買い、所有する」という、ただそれだけなのだと思います。決して他人に向けた行いではない。だからこそ、中古品や模造品では達成できない、真の心の贅沢が得られるのだと思います。
丹精込めたヘリンボーンのフローリングは、この先、O様とご家族にとっての、真の心の贅沢として生き続けてくださるのだと思います。