言うは易し、行うは難し。

皆様、連休はいかがお過ごしでしたでしょう?日々の疲れを癒すとか、家庭サービスに励むとか、いろいろだったのでしょうね。さて、私の場合は「連休だから」という意気込みは例年さほどなく、今年もまた淡々と過ごしました。スタッフが休みを取っている時間、私は経理担当と共に会社で電話番などをしていました。

特別なことが起きない限り、電話番の仕事というのは極めて暇です。私はその時間を利用して「少しは勉強でもしてみようか」と思い立ちました。ただ、コアな建築の専門書や雑誌は普段からながめているので、そうではない角度で何か見識を高めよう、と目論んでみたわけです。そこで、もう少し視野の広い、言わば経営者として読むべきものなどを選んでみました。我ながらいい発想だ、これなら有意義なこと間違いなしだ、と、楽しくなってきました。

手にしたのは「新時代の経営戦略」的なタイトルの本です。さてどんなことが書かれているのかな?「顧客の声をきちんと聞いているか?」う~ん、そうか…。何かを吸収しようと前向きになってはいるのですが、実に言っていることが当り前過ぎて、何も入って来ません。気を取り直して、さらに進んでみよう。「組織としてのブランド力を高めるために」。お、なかなかいいぞ、どれどれ。「自分達本位の商品になっていないかきちんとチェックをすること」「お客様の心の声がきちんと聞けているか己を疑うこと」…。…。…。ついに私はひと言つぶやきました。「なにこれ?」

ビジネス書って、どうしてこう、当り前のことしか書いていないのでしょうね。当り前のことをあらたまって言葉にして、つい忘れがちなことを思い出させるというのが、まあその役割なのかもしれませんが。しかし、そうだとしたら、それは初心をすぐ忘れてしまう人々だけが読めばいい。私の場合は仕事のひとつひとつに対して本の中に書かれているようなことを反芻する癖がついているので(何しろエバーはお客様のビジョンに応じて家も180度考え方が変わる、そういう企業ですから)、結局そういう本というのはどれも、同じ内容のことを言葉を変えて繰り返しているだけのようにしか感じないのです。

この手のものを書いて出版する人というのは、コンサルティングを生業にしている人が多いようです。その方々には甚だ失礼ですが、エバーという会社も、私という人間も、コンサルティングは必要としない会社だし人間です。コンサルティングがある一定の思想や型にはめるのが職業だとしたら、型にはまらないベストな答えを常に自由に出す、というのがエバーのやり方です。真逆と言ってもいいのかもしれません。「お客様の心の声」なんて、基本中の基本。それを思想や型からしか得られない人間は、まずエバーでは務まらないでしょう。経験則から身につける、やっぱりそれが大事なんですよね。建築の授業だけ受けて優秀な建築士になれた人なんて、いるわけがないのです。

「なあんだ」という思いで、私は本を閉じました。これでは有意義にしようと思っていた私の時間が台無しだ。どうにかして取り戻さないと…。そこで、私は今度は迷いなく「007」のDVDを手に取りました。こっちの方が、遥かにエキサイティングじゃないか。最初からそうすれば、よかった。

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