感謝という原動力。

スーパーゼネコンと呼ばれる大手4社の昨年の純利益の合計がおよそ3000億円だということです。それに比べて、ダイワハウスは1社だけで昨年の純利益がおよそ3200億円でした。収益を上げるやり方というのが、大規模な建設計画に依存しているのではなく、倉庫や工場、大型商業施設などの賃貸収入などがあり、そういったことでこれほどの差がついたようです。コロナ禍ではさまざまなことの変化が起きています。
ところで、日本人の収益を上げるやり方は、海外企業のやり方とは違い、合理的ではない部分があります。海外企業のやり方は往々にして1つのものをつくり、それを100人に売るような傾向があります。対して日本人のやり方は、100のものごとを1人の顧客のために追求するような性格があります。海外のやり方をもっと取り入れて収益率を上げなければ、という声があり、それはそれでもっともだとも思います。しかし日本人は、どうせつくるのなら目の前にいるこの人に充分満足のいくまで切磋琢磨しよう、と考えます。効率的でいくか、非効率的でいくか、それは家づくりの面でも分かれている考え方です。
先日エバーのグループの数人で茅ケ崎のレストランで食事をしました。このご時世なので感染対策を守り、距離をとってテーブルを囲みましたが、それでも和気あいあいに充実した時間を過ごすことができました。ル・ニコ・ア・オーミナミの原シェフはレストランのオーナーと料理について実りある会話を弾ませたり、私は私で、いま自分が考えていることなどを皆に話し、塞ぎ込んだ日常の溜まったものを吐露したりもしました。そこで感じたことがあります。それは久しぶりに光がさすような感覚でした。「皆が私のことをわかってくれている」「これまでやってきたことを認めてくれている」「間違っていなかった」そういった肯定感でした。非常に救われたのです。ずっと弱くなっていたモチベーションがふわりと持ち直して「やっぱり、がんばってみよう」と思い直すことができたのです。
コロナ禍で疑心暗鬼になっている人はとても多いと思います。そしてその原因の多くはモチベーションの低下です。コミュニケーションが希薄になり、自分は誰のために、何のためにがんばっているのかがわからなくなってしまう。しかし今回の私のように、自分の存在証明がクリアになればモチベーションは持ち直すのかもしれません。
感謝してくれることの喜び。それは同時に相手に感謝することでもあります。そしてその気持ちが世の中を再び活気づけるはずです。
そう考えると、1人のお施主様のために幾通りもの可能性を考えるエバーの、そのマニュアルのない非効率なやり方というのは、互いに「ありがとう」と言い合える、感謝に満ちたフィールドなのだと、あらためて再確認できました。これでいい、とあらためて感じています。