HEADLINE ~ 法改正で建築確認に遅れ

ー6月の法改正により、建築の確認申請が大幅に遅れている。大手ゼネコン、パワービルダー等は施工の遅れによる顧客への被害は必至。もとより申請数に比して構造計算エキスパートの絶対数が圧倒的に不足している。その上での耐震強化を核とした法改正であるためこのような問題は事前視されていた。従来は処理が容易だった軽微な書類訂正も完全な書類一式を出し直す手間となり、申請の混雑に拍車をかけている模様。

ライター(以下W):構造計算部分ならともかく、さして重要でない部分の漢字が一字違うだけで「はい、全部やり直し~」と、申請のための膨大な書類がまるごと突っ返され、すべてを新しくして再度出向くようになってしまいました。

猪狩:幸い我々のようなハウスビルダーには今のところ大きな影響はありません。ただそういった時間のロスはひどく現実とかけ離れているような気がします。なぜ融通がきかないのでしょうね。融通という言葉が曖昧なら、合理化、でもいいですが。

W:何千人、何万人という人々のマンション入居が現実に遅れるわけですね。

猪狩:行政側は自分達へのリスクは徹底的に排除します。それにしても、もっと現実に即していかないと経済も停滞しますよ。

W:そうですね。

猪狩:合理化すべきもの、合理化してはいけないもの、それぞれあると思います。すべきものはするほど良い、してはいけないものはしないほど良い。私の仕事でいうなら、経営は前者、創造は後者、みたいなもんかな。デザインに携わる経営者っていうのは両刀使いです。

W:今、社のロゴデザインのリニューアルを考えていますね。

猪狩:企業として進化をしていることの意思表示をそろそろすべきと感じたからです。私、クリエイティブディレクター、アートディレクターの3名で進んでいます。彼らは外部ですが普段から付き合いがあるので、当社を身近に感じる視点と、反対の客観的な外部からの視点と、両方の感覚を持っています。

W:打ち合せの雰囲気は?

猪狩:建築とグラフィック、同じデザインに携わる者どうしなので、表面 的な部分をどうするかというより、コンセプトを追求しています。デザインをするには、形にする前にすべきことがあります。それは、思想とか、概念といったものを発見して凝縮する作業です。表面に見えているものより、潜んでいるもの。それがコンセプト。

W:はい。

猪狩:完成度の高いデザインを創り出すためには、形にする前にじっくりと考える作業(コンセプトメイキング)は絶対に必要なことで、でき上がったデザインと同じくらいに大切なものです。言い方を変えるなら、コンセプトをしっかりを考えることができるのがプロで、デザインコンセプトを考えずに手を動かしてしまう人が、素人さん、かな。

W:良い兆しはありましたか。

猪狩:雑談から生まれたひとつの言葉にひっかかりを感じました。それは「変わらないために、変わっていこう。」というものです。時代性を感じました。そしてEverGreenHomeの方向性でもあると思いました。この言葉を核として新しいロゴマークの制作は進められています。「変わらないために、変わっていこう。」そんな気分、いま誰もが感じていませんか?たとえば自分、たとえば家族、たとえば環境・・

W:うん、うん。

猪狩:コンセプト作りって、形にはならないけれど、必要な作業、何より大切です。建築も一緒ですよ。形になる前の議論というのは多ければ多いほど結果 が良くなる。100の議論のうちの99個が使えなかったとしても、その100個全体の議論は、全てが必要だったのです。ひとつの家に100の議論があり、100の設計図があり、しかし実際に行動に移されるのは1の結果 と1の設計図だったりします。それすら出ない場合は、また繰り返す。経過が大事なんです。デザインの仕事というのはそういうものです。非合理を重ねることこそが我々の合理性、かな。言葉が矛盾していますが。

W:合理的になりようがないというか。してしまったら終わりですね。

猪狩:そんな、合理化できない部分を多く抱える立場から言うのは何ですがね、建築確認くらいは、もっとさくさくっとやってもらえませんかね・・