「単に技のキレや力の強さだけで勝てる時代ではないんです。
その時々の状況に順応できるかどうか。
その状況を常に自分に有利に活かせるかどうか。
今は、そこに勝敗がかかっています。」
若干21歳にして柔道100キロ超級の北京オリンピック代表選手に選出された、石井慧選手の名言です。道場参事として、かつ道場支援会の代表として小川直也氏とお付き合いさせていただいている私は、最近、小川氏を慕って道場を訪れる石井選手とも親交をもつことができました。小川道場では、この石井選手と泉選手というふたりの選手が、道場に縁りのある中から五輪代表として選出されたのです。それは小川道場にとってのみならず、茅ヶ崎の町のスポーツ振興にとっても、かつてない大きな出来事です。
雑談の最中、私は、石井選手がテレビのインタビューで言っていた上の言葉について、とても共感したことを本人に伝えました。「今はホームランバッターの時代ではないですからね、イチローさんのようにあらゆる状況に対応して少なくともシングルヒットを打ち、高い確率で塁に出る、そんな順応性の高いアスリートが真の強い選手なんです、僕も、どんな体制からでも技をかけられる、現状を打開できる、決して気を抜かずに攻める時を計れる、そういう選手になりたいんです」その言葉を聞いて、私は思いました。それはアスリートだけの話ではない、と。我々の仕事やあらゆる事柄に言えることです。石井選手の言葉は、まさに時代の真理。彼の若いながらも成熟した感性に打たれました。
物価高騰の影響を受けて、企業は倒産や資産売却が相次いでいます。今は、そういった苦境の中でいかにして耐えるか、逆らうことなくその荒海の中で順応し、期を見て弾みをつけて勝つ、そんなことを考えていかなければなりません。私が思うに、肝心なのは、大きなことなどやろうとせず、日々の些細なことからきちんとやること、きちんとできるようにすること、その積み重ねを大切にすることです。挨拶であったり、掃除であったり、接客であったり、そういった基本をないがしろにしないことが現状打破の第一歩です。設計や施工もまず心の怠慢をなくすことが、苦境の時こそ意識されるべきと思います。接客テーブルにささいなホコリが見えたなら率先してテーブルを拭く、それをすることに社長も社員も関係ありません。
幸い、EVERGREENHOMEは順調につき、スタッフの増強、営業力や設計力の強化に尽力できています。大それたことなど考えず、日々お施主様の夢の実現のために走ってきたその結果 にすぎません。誠心誠意の家づくりとは、相手の状況に柔軟に対応することがまず前提。石井選手の胸中にとても近しいものを感じます。そこにはリップサービスもオーバージェスチャーも必要ありません。必要なのは、礼節と、質と、結果 。それだけです。