HEADLINE~マリーアントワネットがカンヌ映画祭で大ブーイング

「マリー・アントワネット」がカンヌ映画祭で大ブーイング

「ロスト・イン・トランスレーション」でアカデミー賞を受賞したソフィア・コッポラ監督の期待作で、 キルスティン・ダンスト主演の「マリー・アントワネット」の初試写会がカンヌ映画祭で行われた。しかし、予想とは反して批評家らの反応は厳しく、第一回目の試写ではブーイングが起きるほどの反応だった。
しかしながらそんなマスコミの反応にソフィア・コッポラ監督は「気にしていない」と語る。「反応があるのはいいことだわ。可もなく不可もなく何もリアクションされないのよりマシよ。面白いと思ってくれる人がいればいい。でも万人向けの作品じゃないことは確か。」と話す。
批評家に好評だった99年の「ヴァージン・スーサイズ」以来2度目のコッポラ映画主演、マリー・アントワネットを演じたキルスティン・ダンストは、カンヌの式場で「主演できたことやこの会場にいることを誇りに思っている。」と語った。

ライター(以下T):ご覧になったそうですね。

猪狩:私は楽しめましたよ。不満はといえば、ルイ王朝期の建築様式がもっと沢山観たかった。この映画は男よりも女性の方が好きになるでしょうね。舞台はキュートでゴージャス、この時代にこんな暮らししてたか?と思うようなデフォルメも、真面 目一方にとらえてしまうと話がつまらなくなりますね。エンターテインメントとしてとらえれば楽しい。マリー・アントワネット役も絶世の美女という感じではなく、どちらかというと逆(笑)。等身大の感じが上手く計算されていますね。

T:そうとう酷評だったのは、男性批評家が多かったのでしょうか。

猪狩:映画として良い悪いなんて私にはわからないけれど、この監督の女性らしい感性ってすごく強いし清清しいですよ。

T:そうですね。

猪狩:先月コーディネーターのKが辞めたでしょう。寿退社で。惜しいですよ、本当に。「おめでとう」の気持ちよりも「結婚したっていいから辞めんなよ、もっとうちでがんばってくれよ」と言いたい所です、正直(笑)。とくに建築のコーディネーターというのは、内装や造作といったお施主さんが直に接するセンスの部分でしょう。お施主さんの心の中の茫洋としたイメージを感じ取ってかたちにする作業って、本当に女性は上手いと思いますよ。男性だと周囲の音に耳を傾けたりして、「これでいいのかな」なんてバランスをとる。それはそれでいい所だけれど、女性の場合はいちど相手を理解したら後はゴールまでまっしぐらですよ。自分自身を信じきっている。

T:迷いがないですね。

猪狩:そう、迷いがない。そのKにしたって、徹底的にお施主さんを理解して吸収しますから。先日完成した平塚のHさんのお宅も彼女が担当したんですが、お施主さんの奥様がリビングに置く椅子のイメージを持って来てくださった日、Kもイメージスケッチに、まさにそれと同じ椅子をリビングにレイアウトしていたんだから。かつて話題に上ったわけでもないのに、同じブランドの、同じ色の、まったく同じ椅子をですよ!

T:素晴らしい(笑)

猪狩:このソフィア・コッポラも言っているでしょう、「気に入ってほしい人が気に入ってくれたら、それでいいんだ」みたいなこと。理屈じゃなくて、喜ばせたいがためのパワーに満ち溢れていますよ。とくに建築屋は、女性に学ぶことが本当に多いですね。