1月にフランスに旅行に出かけました。
イタリア、ドイツ、オランダなど、建築家として一度は訪れるべき国々を見てきましたが、フランスは今回が初めてです。この国にも数々の有名な建物があります。やはり、「モンサンミシェル」の迫力には驚かされました。敬愛するコルビュジエの代表作である「サヴォア邸」や「ロンシャンの礼拝堂」(脚注)なども観て来ましたが、モンサンミシェルの荘厳な迫力を目の当たりにした後だけに、「ふうん」程度の感動になってしまったことはちょっと残念です。(そもそも較べていること自体がナンセンスですが)そんなわけで、限られた時間を満喫すべく移動また移動の日々。「バカンス」のもつ響きよろしく時間を無駄 にするという贅沢はなく、ただ貪欲に行脚したフランス旅行でした。
食。これも大きな旅の楽しみでした。
寝泊りがパリゆえに期待が膨らむのも当然。三ツ星のつくリストランテを予約し、いそいそと出かけました。期待は見事に、、、裏切られました。というか、ヒドカッタ。
とくに私の大好物の生ガキに至っては・・・パリへの憧れを完全に消し去りました。ほかの料理も素材ではなくソースばかりが主張して、「これがパリの三ツ星なの?」。言っておきますが、私は決して経験豊富で貪欲な食い道楽などではありません。要はそんな私でもわかるほどの・・・だったのです。その店では結局メインディッシュまでたどり着くことなく、店を後にした次第。ユーロが高い現状、三ツ星だけにそれなりの金額でした。ああ、もったいないことした・・・。
(思い起こせば数ヶ月前はそれ以上にユーロは高騰していました。その頃の金額で後悔して帰った人々のことを思うと、それはそれはもう気の毒で仕方ありません。行ったのがその頃じゃなくてよかった・・・)
日本という国が今や、さまざまな面でいかにスタイリッシュであるか、を感じました。
味、清潔度、もてなし方、価値と価格のバランス、そういったことの捉え方というのは、もはやパリであろうと日本にはかなわない気がします。日本に帰ってあらためて感心したのは、デパートも、レストランも、どこもかしこも清潔なことでした。実にスタイリッシュな国に、私たちは暮らしているものです。ここでは遥かに旨い生ガキが、遥かに安く、容易に手に入ります。
たくさんの感動があり、またいくつかの複雑な思いが交錯した、初めてのフランス、パリ。敬意を払うと共に、格付けで有名なミシュランの関係者がいった言葉を思い出します。
「日本にはたくさんの星がまたたいている。」
サヴォア邸
サヴォア邸はル・コルビュジエが設計したフランス、パリ郊外のポワッシーにある近代建築の住宅。1931年竣工。20世紀の住宅の最高作品の一つであり、フランスの歴史的建築物に指定されている。ピロティ、屋上庭園、自由な平面 、独立骨組みによる水平連続窓、自由な立面 からなる近代建築の五原則のすべてが、高い完成度で実現されている。平面 の中央には緩やかなスロープが設けられ、1階と2階を連続的に繋いでシークエンスを形成している。
ロンシャンの礼拝堂(ノートル・ダム・デュ・オー礼拝堂)
ロンシャンの礼拝堂(ノートル・ダム・デュ・オー礼拝堂)は、ロンシャンにル・コルビュジエが設計した。1955年竣工。サヴォア邸などとは異なり、うねった屋根による外部空間、厚い壁から光が差し込む内部空間が特徴的である。ル・コルビュジエの後期の代表作。元々ロンシャンは巡礼地でありこの地には中世に建てられた礼拝堂があったが、第二次世界大戦の際に連合軍の空爆により破壊された。戦後、ロンシャンの人々は再建を願い、そこでコルビュジェに設計が依頼された経緯がある。
Travel Photos by Yuichi Igari