この勉強は、一生もの。

お施主様の本望がわからないと、本当に気に入ってもらえる家をつくるのは困難です。なかなかわからない場合は提案をし続けるしかない。しかしそれでは効率がわるいので、そのお施主様の人となりを知るために観察や推測を繰り返す、その方が近道です。その時に大切なことは、いろいそな角度からその人を眺めてみることです。人ってやはり、一つの方向だけから見てもわかりません。そうした練習を日頃からし続けること、それが私たちにとって大切な勉強です。
この年末年始休みの間に、娘の希望でアニメ「呪術廻戦」を観に行ってきました。始まるまでは所詮子供向けのアニメ「やれやれ…」といった心境でしたが、本編が始まってからは予告の時の眠気は一気に吹き飛んで映画の世界に魅入ってしまいました。
今の日本のアニメは自分らが子供の頃のそれとは違って、物事をさまざまな角度から観察する視点があります。たとえば、悪役にも彼らなりの背景があり、なぜ彼が悪を背負ったかの描写が妙に納得させられたりします。ただ性悪だから、というのでなく、それは見方を変えれば真っ当な言い分であったりします。そうした点に観る者は予想をこえた感情移入をします。物語の一つ一つのピースをどう捉えるかは観る者それぞれの判断です。しかし、いつしか多くの人が、心の中に善悪だけでは判断しきれない矛盾を抱えながら、よりその世界の中へと引きづりこまれていきます。物事は一方向だけを見ても何の本質にも辿り着けないということを知らされながら。
小さな子供達には、世界の複雑さ、というものは理解するにはまだ早いかと思います。主人公の正義を「かっこいい」と思い、無邪気に憧れていれば良いです。けれども、その作品に埋め込まれているさまざまな多角的な視野は、小さな心の中に確実に刷り込まれて、いつの時かにフィードバックするのでしょう。たとえば、誰かと喧嘩した時に、相手の嫌いな一面だけでなく別の角度からも観察できるようになれば、少しは相手の痛みを想像できるようになれるかもしれません。好きな異性に思いが届かなかったとしても、一方的な自分を別の角度から観察できれば、自らの未熟さを反省して将来に新たな魅力を獲得できるかもしれません。
そして建築会社にでも働くようになったら、お施主様の本望を上手に理解することのできる一流の業界人になれるかもしれません。つまり、物事を多角的に観ることの勉強は、一生の勉強であり、一生に渡って役立つことでもあるわけです。