ケイタイ、カーナビ、ネット

現場の段取りが悪くなったなあ、と、痛切に感じます。
いつからだと考えると、やはり携帯電話が普及してからです。それまでは、現場では連絡が取りようがないから、打ち合わせはきちんと済ませて作業に没頭していました。今では、現場でもわからないことはすぐに関係者に問い合わせることができます。その間、作業は止まってしまいます。これはEverGreenHomeの現場だけに限ったことでなく、世界のどこでも起きている現象。ホントに現場の段取りが悪くなりました、携帯電話のおかげで。

私は社内でよく「携帯電話とカーナビとインターネットが人間をダメにする」と言います。どれも使い方に用心というか、警戒心がないと、どんどん人間の頭は楽をしよう楽をしようとし始めますね。何も覚えようとしなくなるんです。便利なモノは生活を便利にしますが、必ず弊害があります。モノでもヒトでも、いちど頼ると、覚える気持ちや先読みする気持ちを依存してしまう。かつては不安な点を一掃して現場に入るのが当たり前だったのに、今は携帯電話があるせいで、準備も心がけも、後で何とかなってしまいます。時間がないからニュースはネットの見出しだけ読んでおく、なんてやっていると、現象や事件のそれぞれのディテールが頭に入ってこないから、好奇心や疑問もすごく薄いところでしか感じません。見出しだけで「へえ、そんなことがあったんだ」と思うだけでは、世の中をわかったことにはまるでなりませんからね。私は、やっぱり新聞です。

私自身への教訓も含めて、便利なものはほどほどにしないと、ですね。便利だ便利だ、と浮かれないで、情報の量 と質をきちんと取り入れる習慣を。このことは知恵や知識に影響するだけではありません。ある時には、感性にも影響しますから。

先日、所用で東京に赴き、余った時間を散歩しました。赤坂を通 り、六本木ヒルズを回り・・。あれ、人がいない・・テナントも頻繁に移り変わって・・なんだろう、この元気の無さは・・一年前とはまるで違う・・世界的な金融不安の波が、六本木ヒルズの上空を大きな暗雲のように覆い被さっている、そんなイメージの不可思議なアートのような景色。未来はここから一体どこに引っ越しをしたのだろう。

帰る道すがら、水についての新聞記事を思い出しました。農業、鋼業、生命、あらゆる分野に絶対的に必要な水を海水から取り出す事業。オイルでいっぱいのタンカーを帰す時に、今度は水を詰めて輸出することはできないかという研究。大切なのは、ヒルズが象徴だったハイテクな快楽の追求よりも、水のようにもっと生活の基本の部分で人間を支える分野なのだろう、やはり。一見きらびやかな街並よりも、頭の中に生まれた泥臭いヘビーインダストリーな光景の方が、よほど頼もしい日本の未来に映りました。ネットの見出しではなく、新聞の小さな活字の群れが与えてくれた、少々強引な心象風景がそこにありました。