鎌倉の情緒にあふれた場所で、南東角地の土地です。駅から徒歩圏内の好立地であり、観光名所も近くに点在しているが故に、休日ともなれば目の前の道路には観光客が絶えません。そんな誰もが羨むような場所に「住む」ことは、プライバシーを確保しつつ、場の雰囲気を適度に取り込むという、街との距離感をデザインすることでもあります。
基本設計の段階でお施主様にどういった生活スタイルが心地良いかをイメージしていただきながら、入念な打合せを重ねた結果、1階は、中庭を介したプライベート空間と水廻りに加えて、建物に取り込んだ倉庫が中庭に車を収納した際にビルトインガレージのような役目を担う、という構成になりました。
2階は、中庭を縦に抜いてドーナツ型になるよう、バルコニーを配した回遊型のLDKとしました。当初の計画では、スキップフロアで空間にアクセントを設けるような計画もありましたが、バリアフリーに対するご配慮もあり、高低差をなるべく少なくしたシンプルな計画に落ち着きました。
プライバシーを確保するための壁に囲まれたような意匠ではあるものの、グランドレベルには横の抜けを、2階レベルは壁の高さの調節により採光や通風を確保しています。
道路に面する南東をバルコニーとすることでボリューム感を抑え、極力開口部を排したキャンバスのような白い外壁沿いには植栽を植えることで街に溶け込む意匠としています。
外から中を見えにくくしている外観に反して、内部の広がりがより一層開放的に感じる建築です。そのため、仕上げに関して明るい色を意識しないとならないというありがちな観念を取り払うことが可能でした。仕上がりは、ブラックチェリーを床材に、ダークなキッチンでオーセンティック印象にしています。
L型キッチンはご夫婦お二人で優に立つ事が可能で、ダイニング側からのアプローチも可能なフラットカウンター。お客様がいらしてもわいわい楽しくキッチンを囲むことができます。
メインの部屋からあえて切り取られた離れのような和室は、それだけでわくわくできる空間に感じられ、内部は明るく、洋和室に仕上げ意匠を施した床板で贅沢な空間としています。