木造平屋建ての歯科医院の増築工事です。増築部分は10㎡を下回る規模ですが、準防火地域のため建築の確認申請と、市のバリアフリー条例の提出が必要となりました。増築部の用途としては、カルテ棚、従業員様用ロッカー、従業員様用トイレです。
住宅とは違い、その空間に長い時間滞在しないため、余剰スペースは設けず、出来るだけコンパクトに計画しました。
カルテ棚の収容量や動線を考慮した時に、前面道路に向かって従業員様用の出入り口が必至となりました。そこで、入り口の手前に木製の縦ルーバーを設え、前面道路から直接建物に出入りするのではなく、附室のようにバッファーゾーンを経由して建物に入ることで、通行人からの視線を遮るとともに、既存建物の縦ルーバーのデザインを踏襲し、建物全体にまとまりのあるデザインとしています。
内部のリノベーションは、ホスピタルデザインのイメージである清潔感、安心感をあたえる白色をベースとしています。
また院内の安心感をつくり出す上で最も重要なことは院長様と患者様との対話であると考え、レセプションに奏でられているジャズの空気感を取り入れ、少しだけ空間の色合いを濃くし、その音色に根幹的な役割を担うコントラバスのラインを壁面に描きました。幾度か訪れる患者様に気づいてもらうことで、院長様とのやさしい会話が生まれてくれればと願っています。既成概念を取り払ってのご提案でしたが、結果「イメージ通りです」と言っていただくことができました。