海から数百メートル。緑豊かで、通る車も多くなく、近接する小学校からは子供の声が聞こえてくる、そんなのどかな住宅街に敷地はあります。そこで、この外部環境と住宅内部の境界線を中心に考えることで豊かな住空間を計画しました。
間口9メートル、奥行12メートルの東西に長い土地の北側に建物を寄せ、南側に庭をつくることで、敷地の奥までまちの雰囲気を引き込む配置としています。
庭側(南側)は1階・2階ともに大きく開口部を取り、その窓辺を計画しました。
1階リビングの開口部は6メートル幅。ちょうど腰掛けられる高さに屋外側の縁側と屋内側のベンチを設置。ベンチは機能に合わせて奥行を変えた居場所をつくり出しています。
2階南中央のホールにはデスクを設け、空を眺められる明るいスタディスペースとしました。勾配天井を銀塗装した針葉樹合板で仕上げることで、隣り合う和室に柔らかく光を導いています。
2階南東側のバルコニーは、そのまま洗面室・浴室と接続することで明るい洗面空間とし、家事導線を効率的にしています。
あえて南側に設置した階段は、リビングのアイキャッチになると同時に、陽だまりに居場所をつくり出しています。また吹き抜け空間による重力換気や自然光を取り入れるのにも役立っています。
長方形のコンパクトな平面形の中に、たくさんの居場所や境界線のあり方を設計することで、広がりと居心地のある住宅を考えました。