絶景地に建つ別荘のような住宅です。長くマンション住まいだったお施主様ならではの、戸建でしかできない魅力が沢山詰められた邸であり、ご主人様が趣味としていたヨットにも似た外観となったことは、必ずしも偶然ではない気がします。

緑に囲まれた好立地を活かすべく、景色を切り取るピクチャーウィンドーを各所に設け、海が望めるであろうルーフバルコニーは敷地いっぱいに突き出すような形態を取りました。不定形な敷地形状が生む複雑さが建築の個性を強め、白い外壁も相まって、船のような印象を与える外観となっています。

間取りは極力シンプルなものとしながらも、三層分の階段を木でアクロバティックにつくることにより、建物の芯にある力強さを表現しました。

玄関を開けると正面には重厚感のある石の壁が出迎えます。夜には照明が石の表面を洗って光が拡散しホテルのロビーのようです。2階と3階は、お施主様のご希望が「なるべく視界をさえぎるものを少なくしてほしい」というものだったため、内装は構造で必要な柱以外は壁を抜き、開口や窓としています。

天井も片流れで大きく勾配を取り、間取りの広さをより大きく見せています。目の前が海という立地に合わせ、流れる木目が力強く、飴色のチークの床材が映えます。

キッチンは奥様こだわりのボルドーカラーで品の良いアクセントとなりました。アンティークからモダンな家具まで幅のあるコーディネートが楽しい印象です。