計画地は大通りを少し入った幅員6メートル道路に接道しています。お施主様のご理解もあり西側には開口を極力設けないことで、すっきりとしたファサードをつくることに成功しています。
道路に対して開口がない建物は、道行く人に圧迫感を与えることにもつながり兼ねないところを、1階を45cm程度の下屋にし、かつ素材を2階とわけることでそれを緩和しています。
一部欠き込まれたような2階のボリュームは、採光と通風、意匠を兼ねた本邸の重要なボイド(抜け)となっています。
アプローチは北面隅の奥まった所に配し、天井、壁を羽目板で仕上げ、少々の閉塞感を感じるくらいに天井を低くすることで、内部へ続くトンネルのようなイメージにしました。
玄関を抜けるとホール、そこにLDKがつながった、そんな横の抜けを感じる解放感のある平面構成とし、リビングまで行くと上部が吹き抜けた縦の抜けを感じる断面構成も取り入れることで、延床以上に広さを感じられる邸になっています。
リビング床面とフラットに設けた南庭のウッドデッキは内外を曖昧にし、さらなる拡がりを期待させてくれます。
空間随所に配した大き目の窓は採風、採光の他に、土地の利を活かした外部を切り取る窓、内外部をつなげる窓と据えて計画しました。
大空間に露出する階段は、本来の用途に加えて両側面を別の仕上げとすることで、つながった空間でありながらも時に別の空間として認知させるような二面性を持つ装置としての一躍も担っています。
2階は居室と吹抜けに面する開けた書斎のみとし、一階の水廻りはサーフィン後に外から直接アクセスできることを可能にしています。
梁を表しとし、フローリングは節やばらつきのあるオーク材をあえて使用しており、綺麗すぎない雰囲気にしています。
素材や色を統一し、造作家具などもフローリングのオークに色を合わせて製作しており、ところどころにある黒い鉄骨等で空間を引き締めています。
階段とキッチン収納とがつながっており、切り離して考えるのではなく、同じ空間の中で一体に見えるよう階段側面はシナべニア仕上げ、収納側もシナで扉をつくり、取手等はつけず同じ見え方になるよう工夫しております。
吹き抜けに面した書斎スペースにはデスクと背面に本棚を製作しています。階段下のスペースは有効活用し、ご主人様の趣味であるサーブボード置き場になっております。