鵠沼のヒューマンスケールな住宅地にありながら、「江ノ電と都市計画道路の角地」という都市的なスケールにも隣接する特徴的な土地です。
そんな目を引く環境での外形的な構えと、往来の多い環境での生活の場所としての居心地良さ、をテーマとしました。
南側には住宅地の広がる北向きな土地といっても、角地ゆえに、北東から西にかけて建物と隣り合うことはありません。そのポテンシャルを考える時、往来からの視線を気にせずに、北の大きな広い空をリビングから眺めることができたら、豊かで居心地の良い空間となるのではないかと考えました。
変形5角形の敷地いっぱいに広げたボリュームを想定し、その外形は残したまま、40%程の面積を中庭やバルコニーとしてくりぬいています。
中庭とバルコニーは、あえて北側にとり、道路からの目隠しとしてリビングのプライバシーを高めながら、南からの太陽光を反射してリビングに導く役割も果たしています。
リビング南側には高窓を設置しています。隣家の屋根をライトシェルフとして利用し、たくさんの光をリビングに取り入れると同時に、重力換気により、北の中庭から南へ抜けていく風の流れもつくり出しています。
光や風の抜け、視線の広がりやプライバシー、など敷地の環境から導いた外形は、一見、目を引くダイナミックな形態でありながらも、道路側の軒先高さを一般的な住宅よりも低い4.5mほどとしています。
いろいろなスケールが隣り合う土地に見合うような、大きさと小ささが同時に存在する風景をめざしました。
内装イメージはお施主様の中で絞られていたので、いかにそのイメージに近づけさせられるかが課題となりました。
機械的で古めかしさを残したスタイルを新築にどう生かすか。そのギャップに違和感を感じさせないための素材、色選びの打合せの運びとなりました。軽快でおしゃれなご夫妻のイメージに合わせて、潔い色のコントラストでありながらダークな色味には温かみを持たせたり、無垢のやわらかい質感や曲線デザインで仕上げながらも、鉄やコンクリートの素材でアクセントを付けたり、と調和を図りました。
閉じた建築物でありながら内部は広々と明るく設計されており、その分、N様邸の世界観ができているように感じます。