本案件はとある建築家の方が設計された建物です。そのため、今回はより現場に近い立ち位置での設計者として、建築家と現場をサポートする形で関わりました。建築家の設計ということもあり、複雑な納まりや普段あまり使う事のない素材の選定など、慣れない部分も多くあったため、エバーなりの納まりや素材の考え方を提示させていただいたり、より詳細な図面を描いて細部や出来具合の確認をしていただきながら進めていきました。
全体の構成としては、RC造の地階(スタジオ)の上に2階建ての木造(住宅)の混構造となっています。地階のスタジオは高低差のある敷地形状に対して複雑な地盤面算定を行い、地階となる要件を満たすようにレベル設定がなされ、10メートルの高さ制限に抵触しないぎりぎりのボリュームとなっています。
1階にはお施主様のお母さまの寝室(和洋室)とご夫婦の寝室、水廻り、2階には大開口のリビングダイニングと子供部屋、さらに屋上とロフトという構成で、外見はさながら4階建てのボリュームです。
最も難関だったのは3次元に傾斜する屋根の形を組み上げる部分です。プレカットの技術と昔ながらの大工の手加工による技術を組み合わせ、複雑な構造フレームを時間をかけて仕上げました。これ以外にも一つ一つの工程を進めるのにさまざまな努力や苦労がありましたが、営業、設計、コーディネーター、監督、多くの職人がチームとなり力を合わせて達成したので、足場が取れて全体の形が見えた時のうれしさはひとしおでした。
内装には無垢のフローリング、漆喰、石を用い、自然素材に囲まれたシンプルな仕上げになっています。
地下の大空間のスタジオは、手触り足ざわりを大事にするお客様のご要望から無垢のマホガニーを全面的に貼っています。
1階浴室は二種のタイルを用いた在来の浴室となっています。脱衣場との壁はフレームレスなガラスで隔てられており、広がりのある浴室空間となっています。
2階リビングの連続する大きな開口からは、通りの並木道が見下ろせる設計です。室内はふんだんにフローリングを使用することで、シンプルに仕上げ、景色が引き立つ仕上がりとなっています。