木造3階建て、15世帯の賃貸共同住宅です。
共用廊下は大きなココスヤシをシンボルツリーとしたパティオ(中庭)に面し、開放性をもたせ、住戸の全てを東西南北の外周に配置しました。道路より2メートルほど高く、森のような敷地の一角での計画だったため、法的手続きから伐採、整地、土留め等の工事も含めて1年以上を要した長丁場の現場でした。
各住戸は3パターンの2LDK中心で、コンパクトながら十分な設備を整えており、内装仕上げは無垢積層フローリングやキッチン廻りの仕上げにアクセントをつけるなど、通常の賃貸の仕様とは一線を画しています。北側住戸といえども隣地の森のような借景を楽しむことができ、また西側住戸からは富士山が美しく望めます。
各住戸内は白を基調として明るくシンプルにまとめており、それぞれに表情を持たせるための工夫をしています。住戸の中心に配置されている対面式キッチン前のカウンターは、3タイプのデザイン、羽目板、タイル、スレートをご提案しました。羽目板のカウンターは木の質感をより感じる空間へ、タイルは白いタイルにグレーの目地を組み合わせカフェスタイルな空間へ、スレートはセメントの重厚感のある質感により印象的な空間をめざしました。
リビング床材は無垢のフローリングを全面に敷き、各階ごとに種類を変えています。1階は明るい印象のバーチのフローリング、2階は落ち着いた印象のウォルナット色のフローリング、3階は幅広のオークのフローリングで明るく温かみのある設えとしました。フローリングに合わせてフロアタイルも相性のよいものを各階選定しています。
システムキッチン、ユニットバス、洗面化粧台はシンプルで使いやすいことを重点に置き選定しています。
とくにシステムキッチンはホーロー製で掃除がしやすく、幅が2400ミリと大きなサイズを採用しており、贅沢な仕様となっています。
外部のサインやアクセサリ、照明はステンレスでまとめています。夜間に敷地全体を照らすように照明を配置し、通りが暗くならないように配慮しています。
全体として、住まいやすさを念頭に、シンプルでありながらも印象的な空間づくりをめざしました。