エバーグリーンホームの最新施工例

新しい美しさを実現した「大屋根と切通しの家」。

鎌倉市 A邸
新しい美しさを実現した「大屋根と切通しの家」。

POINT

「雨漏れしても良いので、おもしろく美しい家にしてほしい」お施主様のご要望はシンプルかつ大胆なものでした。雨漏りは当然論外ですが、家についての細かな話を聞くにつれ、お施主様の口をつくのは、代々住んできた鎌倉という地域への思いと風雨や寒暖と寄り添いながら暮らした旧家屋での庭と結びついた生活のお話でした。その施主の今までの環境への愛を継承しながら、どう新しい美しさをつくるかを考えました。
敷地は鎌倉の表通り。人通りと距離をとりながら、どうやって庭と一体の生活をつくるか、言い換えれば、外に閉じながら外にどう開くか、という一見矛盾した問いが今回のテーマとなりました。
建築は、庭と一体となった土間の上に、開口部のない壁のような屋根が少しだけ浮いた形をしています。
サーフィンがご趣味であるお施主様がサーフボードをそのまま持ち込めるよう、1階の床は床暖房を埋設したコンクリート土間。ロングボードの大きさに合わせ天井高が3.3メートルとなるシンプルなジョイスト梁を架け、そこに羽織らせるように急勾配屋根をかけています。
軒を地面から1300ミリまで下げることで、前面道路に対して閉じた構成としながらも、床近くでは庭に大きく開いています。屋根と外壁の隙間にある三角のハイサイドライトから空や山々の緑をとりこみ、一日の中で移り変わる直射光と軒天井を反射して入ってくる間接光で室内を落ち着いた明るさで満たしています。
屋根材と軒天井には大波板を使い、すこし“住宅的ではない”素材感とスケールで陰影を作り出しています。
天井と壁はラワン合板、ロットによる色味の違いを尊重しながら、大和貼り(葺き)のように貼ることで陰影のある表情としながら、隠れる部分をつくり施工性に配慮しています。合板という安価な材料ながら、大工のていねいな仕事がそのまま化粧となるような豊かな仕上げになっています。
外構では、残土として処分されてしまう土たんを軒下に引くことで砂利にはない無骨でダイナミックな表情を生かしています。階段の一段目や玄関、軒下には旧家屋で使われていた庭石を転用しています。波板や合板、土たんや庭石という高級ではない材料を「見立てる」ことにより上質な仕上がりとなることを意図しています。
鎌倉は屋根を景観のキーワードとしてます。歴史的建造物はもちろん、駅から敷地に続く表通りにも屋根を特徴づけた商業建築が並んでいます。
一方、敷地から街の外側へ向かって通りを進むと、切通しに代表されるような擁壁や崖などの鎌倉的な斜面が多く見られます。
少し傾いた壁とも屋根ともいえる波板の斜面は、周辺を囲む鎌倉の原風景と親和性を持ちながら、旧家屋から残るくぐり松と並んで新たな美しさにたどりついているのではないかと考えています。

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