江の島まで徒歩圏内でありながら喧騒とは切り離された長閑な敷地。初めて現場を訪れた時の印象は、緑の豊かさと鳥のさえずりもあいまってか、とても心地良いものでした。
江の島の眺望を獲得するため二階リビングを前提として、グランドレベルでどのようにして環境を取り込むかを考えた結果、玄関の内外と庭を絡めたプランとし、敷地に沿うように玄関ホールから階段を設けることでリビングへと誘うような動線計画としています。リビングを抜けた先が眺望の良いバルコニーとなるようストーリー性も意識しながらプランニングを行いました。
内外装はなるべく落ち着いた色、素材を選ぶことで、新築でありながら環境に馴染むよう配慮をしています。アクセントとして所々に鉄を配し、柔らかさの中にも空間を引き締める効果を狙いました。
旗竿地が活きるようなシンボリックな屋根形状はリビング、ダイニングの空間にも勾配天井としてあらわれ、照明もそれらが適度に際立つ演出とすることで、昼夜で違った表情を楽しめる計画となっています。
植栽もプランニング段階からある程度計画し、規則的にライトアップされたシンボルツリーと不規則に配置した木々の2パターンの緑化が建物に奥行きをもたらしています。
通常の建物に比べ、軒高をかなり高めに設定することで職人の手間は増え、不定形な平面や多面体の天井は高い技術を要求されますが、それらが叶った本邸は唯一無二の存在であり、そこに住まう人々や、訪れる客人を大いに喜ばせてくれることを期待しています。