ここ数年、非常にロケーションの良い敷地への設計が多く、そして今回も江の島への眺望に長けた高台でのプロジェクトとなりました。また、こだわって建てられた注文住宅にお住まいのお施主様が意を決して湘南エリアに住み替えるにあたっては最高の環境下であり、一軒目の経験を活かしながら思案を重ねた結果、独特のバランスから成る間取りとなっています。
構成としてはピロティのような広い半屋外空間を通り玄関扉をあけると土間、廊下、吹き抜け階段が一体となった玄関ホールが出迎えるかたちとなります。それらは建物の中心部に位置し、周囲を取り囲むように居室と収納庫、大開口を設けたご主人様の書斎からなる一階の平面構成です。
シンボリックな階段を上がるとほぼ全面を勾配天井としたリビング、ダイニング、キッチン。そのどこからでも江の島を望めるような配置とし、ウォークスルーの水廻りを裏動線とした2階となっています。
ふだん優先すべき方位よりも眺望を優先したがゆえに、メインファサードとなる東面の外観には窓が一切なく、代わりに玄関に通ずる穴が一つあいているだけという、非常に閉鎖的な外観を裏切るような内部の開放感がこの建築の魅力を引き立てています。
内装は全体の構成を邪魔しないよう、極力シンプルに納めることをめざしています。建具は全てハイドアかつ枠を設けないクロスを巻き込んだ仕様とし、巾木は今回はじめてFBを採用しました。エバーの標準的な仕様とは異なったため取り付けに際し試行錯誤もありましたが、すっきりとした印象の空間づくりに大きく寄与しています。
玄関の床のタイルは大判のものを選び、斜めに切られた段差、框までタイルにすることで広さをより感じられるよう計画しています。
さまざまなクロスやタイルを配しながらも、全体として一つの色彩の中におさまっていることで統一感が生まれ、独特な空気感が連続して感じられる内部空間となりました。
お施主様ご支給のクロスやタイル、照明、壁面のセルフペイントなど、空間ごとにお施主様ご自身で彩りを加え、共につくりあげた住宅となりました。